アルバイトをしていた友人の話を信じて

学生時代は本当にバカだった。たまり場のアパートで大騒ぎして大家さんに乗り込まれたり、酒を飲めば電柱に登ったり、ろくな事しない仲間といつもフラフラ遊んでいた。

ある日いつものようにアパートでウダウダ話をしていて深夜になった頃。バイト先のドーナツ屋から帰ってきたNが、勝手に持ってきたあまり物を食べながらバイト先の話を始めた。最初はあの子がカワイイとかブスがうるさいとか言ってたので誰も相手にしなかったのだけど、閉店間際のドーナツの話になって、そこにいた全員の目が真剣になった。

Nの話だと、毎日閉店時間前になると売れずに残ったドーナツはカラスに荒らされないよう厳重にビニール袋に入れて棄てられるという。
「普通にキレイな袋に入れて棄てちゃうからもったいないんだ。」
Nの言葉に全員の心がひとつになった。
「よし、ドーナツ救出作戦だ!」
別にドーナツは困っていないと思うのだけど、私もヒマなので車に乗り込んだ。駅前に急ぐとドーナツ店は丁度良いタイミングで弊店作業中だった。

暫く待っていたら、例のカワイイ女の子がドーナツが入っているらしい袋を持って店から出てきた。外の所定のゴミ捨て場に袋を置いたのを確認すると、Nが取りに走り、2つの袋を車に積み込んだ。N以外は全員腹ペコで、初めての救出作戦に尋常でなく興奮していた。途中のコンビにでジュースを買い、猛烈スピードでアパートに戻ると、さっそく袋を開けてドーナツパーティーは始まった。Nのこのひと言で。

「うえ、生ごみ」

皆がフリーズした。
そう、我々は深夜にわざわざ車を飛ばして生ごみを救出してきたのだった。結局2つの袋は両方生ゴミだったので、我々はひとつもドーナツを食べる事が出来なかった。アパートの主は空腹で怒り狂い、Nにコンビニのおにぎりを20個買ってこさせた。あのおにぎりの味を私は忘れない。ドーナツより美味しかったように思う。

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